M君は、練習をよく頑張っている小学2年生。発表会のポップスの曲を練習中です。
指が寝てしまい手首で無理に弾いてしまうフォームは、本人が意識して改善に努めるようになりました。徐々に、自然な弾き方になってきましたね。
今回の課題は、複数のメロディーが絡み合っているとき、指が届かないときにどう対応するかです。まだ、指が小さいから届かないということもありますが、大きくなったとしても指が届かない音程が出てくることが多々あります。その際に、どのように弾くかがきれいに演奏できるかのカギになります。そして、その一番基礎的な考え方を解説しています。
同じような音型が連続していて、メインの旋律は上の音ですね。上の旋律は、保持して、下の旋律は、スラーなので二つの音を滑らかに弾きます。一つ目のスラーはうまくいきますが、二つ目は指の大きさが足りなくて、切ってしまっています。似ている旋律なので、一つ目は滑らかで二つ目は切れてしまうのは、非常に不自然です。しかも、似ている旋律がこのあともたくさん出てきます。
指が届かないというのは、子供限定の問題ではなく、大人になっても届かない幅が指定されていることがよくあります。場合によっては音を省略したり、アルペジオにすることもありますが、問題になっている右手を考えるとこの曲の場合の解決方法は、ペダルです。個人的には上の音をペダルに頼って、スラーはきちんとつなげて弾きたいと思います。というのも、ペダルを使っても、切って弾いているのかつなげて弾いているのかはわかります。上の音は、付点二分音符でのばす音なので、ピアノの場合は鍵盤を押していても音の大きさは保てませんので、ペダルでもさほど変わらないと思います。ただ、それだとちょっと濁りますので、何度も弾いてどちらが合っているのか比べて、自分がうまく演奏できる方を選びます。
ただし、この曲の場合は、大きな問題があり、左手がスタッカートです。困ったときに頼りになるペダルは使わない方がよさそうです。すると、上下どちらを優先するかといえば、下のスラーがついている2音を優先させます。理由としては、似ているパターンを何度も繰り返すので、一貫性を出すためには、同じ雰囲気のフレーズ感を出さないといけません。ここで切ってしまうと全部のフレーズで切らないと統一感が出ませんが、そもそも切ったらスラーがついているのに滑らかさが出てこないわけです。上の方がメインのメロディーと考えるのが妥当ですが、先程も述べたように付点二分音符で長く保つ音符なので、保持していても少し音は弱くなります。なので少し短くして二分音符にしても、ホールの響きを考慮しても問題はないでしょう。
音と音のつながりは、縦(和音)と横(メロディー)がありますが、今回は横のお話です。その音と次の音はどのようなつながりがあるかを、音の流れやスラーなどの記号を参考にして考えてみましょう。そして、手の大きさなど持っているものの違いや技術的な問題などで、指定された通りに演奏するのが難しい場合は、何を優先するのかも大切になります。
このように解説すると細々していることを考えないといけないので、面倒だと思うかもしれません。しかし、実のところは、記号など関係なく、譜読みをした時点で何となく弾き方をイメージします。そのイメージに偏りがないか、作曲者や編曲者が特殊な表現をしていないか、音符や記号で確認していくのがよいでしょう。