なぜ発表会は「ピアノ曲」が必須なのか~クラシック音楽の教育を採用する理由~

当教室の発表会は、好きな曲を演奏できますが、その曲が「ピアノ曲」に当てはまらない場合は、「ピアノ曲」も演奏することになります。ただでさえ練習が大変で親子でメンタルがボロボロなのに、なぜと感じる方も多いでしょう。もともと、発表会は「ピアノ曲」がメインであり、余裕があればジャンル問わずに好きな曲を弾いていいということになっていました。最近は、メインが逆になってしまうパターンが増えていますので、なぜピアノ曲を演奏するのかを解説します。

1. 当教室の発表会の目的

当教室では、発表会とぴあのフェスの2つのイベントを行っていますが、この2つのイベントは、目的が違います。主な目的のみ記載します。

1-1 発表会

  1. 普段の練習曲で培ったテクニックを、音楽作品を使って総合的に練習すること
  2. 数か月先の練習で躓きそうなテクニックを前もって練習すること

普段の練習の延長線上にあり、レッスン効果をより高めるために行います。「2」を意識しない方が多いのですが、どんなにゆっくりとその人のペースに合わせて少しずつ難易度を上げていったところで、難しいものは難しいのです。結局、突破するには勢いよく練習するしかなく、ダラダラしていると年単位で時間がかかります。誤魔化して次に進めば、そのテクニックを使う曲が当たり前に出てくるようになって限界を感じるようになるわけです。そうなる前に、発表会で勢いよく練習せざるを得ない状況を作るのが楽なわけです。

1-2 ぴあのフェス

  1. アンサンブルで、音楽の呼吸、拍子とリズム、音の出し方などの表現方法など、基礎能力と音楽性を磨く
  2. 自分で選んだ比較的短く容易な曲を、細部にこだわりながらしっかりと表現する

ぴあのフェスは、基本はアンサンブルを経験することによって音楽の基礎力と音楽性を磨くことが主な目的です。アンサンブルを演奏した人も、アンサンブルはまだ難しい方に関しては、比較的自由に演奏できますが、独奏の場合、本来の目的は「2」ということになります。

2. 「先につながる練習」になる

当教室では、ピアノ曲を、「西洋音楽、所謂クラシック音楽で、ピアノのために書かれた作品、原曲があったとしても一般的にピアノの曲として知られている編曲」としています。単純に考えていただくと、なぜ古い曲を弾き続いているのかを考えてほしいと思います。

いい曲であることはもちろんですが、いい曲で人気があっても、その人気が長く続くわけではありません。その理由は単純で、「弾きやすく」「練習になる」からです。

3. ポップスは、原曲の影響が強い

ポップスは、今後に向けた練習にならないかといえばそういうことでもありませんが、やはりピアノ曲には及びません。ただし、ジャンルが幅広く、やる曲ごとに使っているテクニックや和音、リズムが全く違うため、次の練習に繋がりません。そのため、ステップアップ式に練習することが難しいのです。

そして、近年のポップスのアレンジは、ピアノのための編曲というより、原曲のイメージを重要視する傾向があります。そのため、指を回しにくいフレーズになったり、ピアノの響きとしてはどうかなと思うような和音やリズムが出てくるわけです。

このポップスを使ってステップアップさせていく方法は次の通りです。

  • 同じアーティストの曲だけを弾き続け、マスターしてから幅を広げる
  • 膨大な時間をかけて練習したくさんの曲を弾いて経験を積む

ポップスのピアノアレンジ曲は、「1曲完結」になりやすく、次の練習につなげることは難しいということです。もちろん、練習したことは無駄にはなりません。そこは勘違いしてほしくはないですが、練習に費やした時間の割には、上達度合いが物足りないことが多いということです。このことからも、ポップスに関しては、ピアノ曲でレベルが高い曲が弾けるようになってから弾き始めた方がいいと思います。または、コードから覚え、自分でコード弾き(弾き語り)から始めて徐々に伴奏とメロディーのパターンを増やしていくとステップアップ式にできるのでお勧めですが、広く学ぶというよりは偏りが出てくる可能性が高いでしょう。

4. 人気ピアノ曲の条件

現在でも一般的に演奏されるピアノ曲は、音楽性については、好みの問題ですので割愛しますが、技術面で見れば、ピアノで弾くことが目的に書かれた曲なので、難易度を問わず使うテクニックに共通点が多くなります。そのために音の数などで、難易度別に練習することが容易です。時代や作曲家でもちろんテクニックや和音、リズムに違いはありますが、難しいと言われている曲でも練習していれば弾けるようになります。

難しい曲でも練習すれば弾けるという言葉をあまり信じていない生徒や保護者がたまにいますが、ピアノの名曲(人気の曲)は、これまでにたくさんの人が弾いているので残っているのであって、誰も弾けないような難しい曲は、人気は出ません。長い曲で人気があるので、(ピアノ曲ではないですが)ベートーヴェン第9くらいなもので、ピアノソナタで有名なのも、分かりやすく、比較的短い楽章です。

長く人気があるピアノ曲は、「曲が短く」「分かりやすく」「頑張れば弾ける」という特徴があります。プロしか弾けない曲は、人気がなく、誰も知らないし、専門家が名曲だと言っていても、埋もれています。ピアノの曲は、プロじゃなくても弾ける曲が有名なのです。

「ねこふんじゃった」「エリーゼのために」「トルコ行進曲」などをはじめ、ショパンやリストなども、難しいと言われつつもプロじゃなくても頑張れば弾けるから人気が高いわけです。個人的には、この「頑張れば」も人気ポイントだと思っています。

5.ピアノ曲が上達に適している理由~スパイラル式~

ピアノ曲が、上達しやすい理由は、簡単です。たくさんの人が弾いているから、難易度の設定も間違いなく、名曲を弾きこなすための練習曲も体系化され、ステップアップ式での教育が可能です。挑戦するタイミングや練習方法、完成までの時間なども予測しやすくなります。

テクニックは、使う頻度は違えど、一度だけしか使わないようなものはなく、ほぼすべてが難易度を上げながら繰り返し出てきて、記憶にしっかりと刻み込まれます。ただのステップアップ式ではなく、同じことを定期的に繰り返しながら学ぶ「スパイラル式」ともいえます。

「スパイラル式」ができるため、たくさんの練習曲の総復習に「発表会の曲」、この発表会の曲の練習が、次に待っている難所の「予備練習(予習)」になります。この流れに持っていき、レッスンの効率性と実力の向上を促すために当教室の発表会では「ピアノ曲」を必須としています。

6.クラシック音楽のピアノ教育は、日本の言語学習の英語教育

日本で最も体系化され、広く普及している言語学習は英語でしょう。様々なメソッドがあるとはいえ、明治以降、最も研究され、発展してきた教育方法であることは間違いありません。個人的には優れている教育だと思っています。それと同様に、ピアノ教室のほとんどは、クラシック音楽の教育方法を採用しています。その理由も同じで、最も体系化されていて、問題点やトラブルの対処法も蓄積されているためでしょう。

では、英語以外の言語学習が体系化されていないかといえば、そういうことではありません。ただし、日本の教育環境からすれば英語から入って、ドイツ語やスペイン語などの流れもありますし、別に中国語や韓国語を学ぶ人もいるでしょう。

音楽も、クラシック以外の教育が体系化されていないわけではありません。しかし、音楽の分類は曖昧であり、常に変化していきますので、体系化が追い付かない状況なのかもしれません。ポップスといっても、ジャズを別にしたとしても「クラシック・ジャズ音楽以外」となるので、言語でいえば「英語以外の言語」です。将来的には、子供に教えられるくらい体系化されるかもしれませんが、ジャンルが多いので何とも言えないところです。

様々なタイプの子がいる中で、今のところ弾けるようになる可能性が高いのはクラシックの教育方法でしょう。ちなみに英語学習が広く普及している割に英語を話せる人が少数ですが、ピアノも同様で、結局は練習しなければ、弾けるようにならないのは言うまでもありません。

7.なぜ、ポップスの演奏もOKにするのか

英語は、日本で一番人気の言語学習ですが、クラシック音楽は、どちらかといえば少数派です。人気がないわけではないですが、流行りの曲には負けます。当教室は、クラシック専門というわけではありませんし、実はレッスンでもポピュラー音楽の理論を少し学ぶようになっています。

今の時代、ポップスも弾けた方がいいと考えているわけです。

その思いは本当ですが、結局のところ、ポップスを弾きたい生徒が非常に多く、モチベーションが上がるという理由が一番大きいでしょう。

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