目的と目標をよりわかりやすく

昨日もダラダラ、今日もダラダラ、明日もダラダラするだろう…。ピアノの練習って、何でこんなに嫌がるのか。本人に聞いたらピアノは好きっていうのに練習しないってどういうこと?

練習する気がないのはどうにもなりませんが、もし練習しないといけないと思いつつもつい手をつけられないというのなら、「なにを練習するか」がわかっていないのかもしれません。基本は、習慣化することですが、習慣化しようにも「何をどのくらい練習するの?」と思っているようでは習慣化できません。

そういうことで、練習嫌いな僕の生徒たちに、最低限やってきてほしい「ポイント」を提示することにしました。毎回提示するとは思いますが、内容によってはできないものもあります。

のんびり生徒たちに効果はあるか?

1. レッスンの内容

基本30分のレッスンの中で、複数のピアノ教材を使い、それに加えて音感やリズム練習などを取り入れます。その理由は、教材ごとに癖があり、広い音楽を対象にしている教材であっても、練習曲のジャンルやテクニック、リズムなどに偏りが出てしまうためです。さらに、個々の音楽能力(音感・リズム感・指の動き・譜読み・ディクテーション・鍵盤の把握など)は異なる為、楽器を使わずにとてもシンプルな形で基礎力を培う訓練、リズムを取らせる、楽譜を読ませる、ドレミで歌わせる(ソルフェージュ)や指のストレッチなども取り入れます。

2. 短いレッスンの中で様々な教材を扱う理由

ピアノ教本についても、もちろんジャンルやテクニックの違いもありますが、「譜読み」の練習をメインに使っている教本、テクニックを身に付けるために使っている教本など、重視しているポイントがあります。例えば、バイエル教本でテクニックを身に付け、バスティン系教本で譜読みの力をつける方法などをよく用います。

また、教本ごとにレベルを変えているのも当教室の方針です。難しい教本でゆっくり着実にテクニックを身に付けつつ、比較的容易なレベルの教本でどんどん進ませ譜読みの力をつけるようにさせます。なかなか合格できない教材だけでは自分にはできないのではと不安になりやすいのですが、どんどん進む教本があれば「できている」という自信につながります。

この方針は、いろんなことをやりながらピアノを学んでいる方が多い当教室では、非常にあっていると考えています。しかしながら、多数の訓練を短時間でこなすことは、消化不良を起こしやすいという課題がありました。音楽の訓練は、基礎訓練一つについても、特に子供には一体何のためにやっている訓練なのか理解が難しいのですが、それを短時間でたくさん行うわけですから結局何をしているのかがわからないという結果になることも多いのです。

3. 1回のレッスンの中で最重要課題がある

音楽教育の特徴は、基本的に「長期の視点」で技術を習得させることにあります。そのため、レッスンの課題の中には、今、マスターしてほしい知識やテクニックとほどほどでよいものとがあります。子供は、「ここだけやればいいのか」と言いがちですし、大人は逆に「ここだけでは不安」と中途半端な状態で次に進もうとしまう傾向があります。

中には、すごく熱心に自宅練習に取り組んでくれる人もいて、それが一番であることは言うまでもありませんが、最近は、いろいろとやることが多い世の中なので、なかなかできない方も多いと思います。そうすると怖いのが、せっかくレッスンを受けているのに、ダラダラと進んでしまうことです。最初はゆっくり練習を始めて構わないのですが、指を動き、リズム感のことを考えるとある程度のテンポで弾かなければなかなかできるようにはなりません。速度が上がらないのも困りますし、速度を上げてもめちゃくちゃになってしまうのも困るわけです。

練習曲は、マスターさせたいテクニックがたくさんあるわけではなく、同じテクニックやリズムパターンを音を変えながら繰り返すことが大半です。あとは曲を成立させるために全く違う音型があるかもしれませんが、ポイントとなるテクニックや知識は一つ、二つです。

4. 最重要課題に「なぜ」を加え、練習の目的をはっきりさせる

自宅で相当な練習をこなしている生徒を除いては、練習のポイントをはっきりと伝え、レッスン内でポイントの部分だけの反復練習をさせます。その際、目的・やり方を示し、ある程度、できる状態にしてから自宅学習へとつなげます。今までもそのように行っていましたが、全体的な曲の説明の中で大切な部分を伝えていた為、重要度が理解しづらかった可能性があり、ポイントの練習よりも全体的な譜読みを優先させていたため、ポイントの練習をよくしてくるように促しても、なかなかその部分を重点的に練習する生徒というのは少数でした。

そこで、重要ポイントとそのやり方を示したうえで、レッスン内で反復練習をさせようと考えています。

5. 生徒にどの程度で習得できるかを検討させる

さらに、もう一つの工夫としては、どの程度で「上手に」できるようになるかを生徒に検討させることです。重要ポイントは、(曲やレベルにもやりますが)1小節から長くても4小節程度ですので、きちんとやればレッスン内でスムーズにできるようになります。今回のポイントは、どのくらいの練習でできるようになるかを考えさせ、その場で実践させます。

この回数を自分で考え、その場で実践し、スムーズに弾けるようになれば、自分自身で練習の目安を立てられるようになることを期待します。

6. ポイントをはっきりさせ、自宅練習を効率化

練習の重要箇所と「どのような練習なのか」を確認し、練習の目安もイメージできるので、自宅での練習も効率的に行うことができます。さらに、レッスンでは、「どのくらいできるようにするか」を考えさせる予定です。いわゆる「目標」です。「もっとテンポを速く」「強弱をしっかり」など極力分かりやすいものがいいと考えます。慣れるまでは小さ目な目標を考えるように誘導します。

その「目標」の達成を優先して練習を進めます。「レッスンで学び、実践したポイントを練習し目標を達成させる。余裕があったら練習を広げればいいわけです。これにより、練習しているのに、すべてが半端になり、上達が遅れてしまうことを防ぎます。もちろん、すべてをこなせるならいいわけですが、0か100かでとらえないことが大切で、それが自分のペースということです。せっかくレッスンに来ているのに、限りなく0に近いというのは自分のペースではありません。1とか2とかでもいいからできるようにして進んで行けばいいわけです。

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